「小説考察」(前編)

空の境界(上) (講談社文庫)

空の境界(上) (講談社文庫)

空の境界』原作小説をまとめ買い。


この前観た「俯瞰風景」を読んだけど、「引き」の要素で構成されているからか、結構あっさりしていた(時系列がバラバラだけど、シーン毎で纏まっていたし)


一人称複数人視点で描かれていたのは、予想外だったけど。


原作を読むと、アニメ劇場版の工夫と苦労が良く分かる。


原作の時間構成でそのままやると、テレビシリーズになってしまうし、読者が思わぬ展開に「唖然」とするようにさせるには、小説と映像では媒体の「時間」の概念の違いを考慮しないといけないしね。


劇場版で、黒橙幹也が2月もの間「蝶の夢」を見ていた「事実」を観客に認知させる映像構成は、少し拙さを感じる部分があったけど概ねうまくいっていたと思う。


両儀式のキャラクター紹介としては120点満点の再構成だから、些細な問題だけど(笑)


メディアミックスは大概にして、諸作品ただ集めて消費する「祭り」としてでしか楽しめない、ということになるデメリットを生むのですが、『空の境界』に関しては「祭り」として楽しみつつ、原作と再構成するアニメスタッフの作品自体の「試み」を味わう貴重な機会があると思います。